多発血管炎性肉芽腫症”Nao”さんのインタビュー

目次
  1. Naoさんの奥様のプロフィール
  2. Naoさんのご紹介
  3. Naoさんの奥様の症状と治療
    1. 関節の痛みで歩行が困難に
    2. 整形外科では問題が見つからない
    3. 甲状腺専門病院でも原因不明
    4. リウマチ専門病院でも確定診断されない
    5. 総合病院での1か月の検査で確定
    6. ステロイド100mg投与で躁状態に
    7. ステロイドで精神不安に陥る
    8. 血管炎の症状が多様でわからない
    9. 空気清浄機と加湿器で感染症対策
    10. 信頼できる情報源が大事
    11. 二人で飛行機を飛ばしている

Naoさんの奥様のプロフィール

Naoさんの奥様

【お名前】Naoさんの奥様

【病名】多発血管炎性肉芽腫症

【その他持病】なし

【性別】女性

【発症年齢】40代

【現在の住まい】東京都

【現在の年齢】43歳(2025年時点)

症状や治療法

● 初期症状

関節痛、発熱

● 発症~診断までの期間

2週間~1か月

● 現在の症状

発疹、疲労感、頭痛

● 現在の治療法

ステロイド(プレドニン、ステロイドパルスなど)、生物学的製剤(リツキサン、ヌーカラなど)

● 再燃の経験の有無

なし

● 病気のことを一番相談できる人

家族

● 初年度の医療費(窓口負担額)

100万円台(併発疾患の治療費含む)

● お仕事の有無

無職

● 日常生活で工夫していること

ストレスを抱えないように好きなことをするようにしています。

● 周囲にお願いしたいこと

不摂生、不養生にかかわらず誰しも突然なる可能性があることを理解して欲しい。

● 早期発見のために、今の自分ならどう動きますか?

街の内科に行って、リウマトイド因子やCRPがチェックできる血液検査を行ってもらうこと。

YouTubeインタビューはこちらをご覧ください。
動画投稿日:2024/03/17

Naoさんのご紹介

Masaya

本日は、奥様が多発血管炎性肉芽腫症の患者であるNaoさんにお越しいただきました。
Naoさん、本日はよろしくお願いします。

Naoさん

よろしくお願いします。

Masaya

今日は色々とお話を伺っていきたいと思います。まずは自己紹介をお願いできますか?

Naoさん

ありがとうございます。私の妻は多発血管炎性肉芽腫症と診断されており、現在42歳です。私は52歳で、10歳離れています。現在は私が自宅で妻の看病をしている状況です。

Masaya

ありがとうございます。多発血管炎性肉芽腫症という病名は少し長いので、今回のインタビューでは「血管炎」として進めていきたいと思います。

Naoさんの奥様の症状と治療

症状や治療内容は、患者さん一人ひとりで異なります。また、注釈に記載している医学用語などの解説は、読みやすさを重視して記載したものであり、医学的な監修を受けた内容ではありません。
詳しくは、かかりつけの医療機関や担当医にご相談ください。

関節の痛みで歩行が困難に

関節の痛みを抑える女性
関節の痛みを抑える女性

Q:奥様に血管炎の症状が出始めたのはいつ頃からでしょうか?

A:2023年の7月25日頃からですね。妻が「関節が痛い」と言い始めたのが最初でした。

Q:もともと関節に関する病気をお持ちだったのでしょうか?

A:いえ、全くありませんでした。急に右肩が痛くなり、右肩を下にして寝られない状態が続きました。一晩中痛みに耐えることもあって、「おかしいな」と感じました。

整形外科では問題が見つからない

Q:その後、最初に受診されたのは何科でしたか?

A:関節の痛みがあったので、リウマチを疑いながら整形外科に行きました。

Q:リウマチを疑ったのは、ご自身で調べた結果ですか?

A:はい、痛みが日によって右肩から骨盤、膝と移動する傾向があり、インターネットで調べると、リウマチのキーワードが出てきたんです。あくまで素人判断でしたが、少し気になっていました。

Q:整形外科ではどのような診断を受けましたか?

A:ほとんどすべての関節が痛かったため、レントゲンを全身撮ってもらいましたが、特に異常はないとのことでした。リウマチではないかと尋ねたところ、「リウマチなら俺はすぐわかる」と言われてしまい、結局「疲れが原因」との診断でした。

Q:その時、薬などは処方されましたか?

A:はい、痛み止めとしてボルタレンを処方されました。

Q:薬の効果はありましたか?

A:一時的には効きましたが、ボルタレンは強い薬なので毎日服用するには適していませんでした。2〜3日後には「やはり何かおかしい」と感じ、別の病院に行くことにしました。

甲状腺専門病院でも原因不明

Q:次に行かれたのは、どのような病院でしたか?

A:実は妻には橋本病があり、25歳頃から診てもらっているかかりつけの病院(甲状腺疾患の専門病院)があります。そこに行きました。熱も39度近く出ていたこともあり、コロナや感染症を疑われて、長時間診察を受けました。

Q:その病院での診断はどうでしたか?

A:橋本病の専門病院だったので血液検査をしてもらったのですが、「うちではわからない」と言われてしまいました。そこで、やはりリウマチを疑って専門病院に行きました。

リウマチ専門病院でも確定診断されない

血液検査を受ける女性
血液検査を受ける女性

Q:リウマチ専門病院では、どんな検査をしましたか?

A:MRIなど、かなり多くの検査を受けました。CRPという炎症反応の値が高く、リウマチではここまで高くならないと言われました。リウマチの可能性もあるけれど、MRIを見る限りでは確定診断はできないと。

注釈

CRP(C-リアクティブプロテイン)とは、体内で炎症が生じている際に増加するタンパク質の一種です。血液検査でその値を測定します。関節リウマチなどの膠原病でも高値になりますが、どの臓器、部位に炎症があるかはCRP検査だけでは判断できないと言われています。

Q:そこで内科への紹介があったんですね。

A:はい。「循環器系の疾患や感染症の疑いもある」と言われ、近所の内科を受診。そこから更に総合病院を紹介されて受診することになりました。

Q:関節の痛みが出始めてから、症状の変化はありましたか?

A:特に変化はなく、ずっと関節の痛みが続き、歩行も困難でした。病院へはほとんどタクシーを使って行っていました。

Q:ちなみに、私は鼻の症状から始まったのですが、奥様はそういった症状はありましたか?

A:いえ、全くありませんでした。後でGPA(多発血管炎性肉芽腫症)は上気道に最初に症状が出るケースが多いと聞いて、「そうなんだ」と驚きました。

Q:同じ病名でも、発症の仕方は人それぞれなんですね。

A:本当にそう思います。最終的には病院で生検をしてわかったのですが、それまでは関節の痛みが主な症状で、そんな病気だとは全く思いませんでした。

総合病院での1か月の検査で確定

Q:総合病院では、すぐに診断がついたのですか?

A:1週間〜10日ほど検査入院をしました。その中で「GPAの疑い」とされ、さまざまな検査を受け、最終的に生検によって確定診断されました。関節の痛みが出てから診断まで1か月ほどかかりました

Q:診断がついてから、調べたりはされましたか?

A:はい。ただ、日本語ではGPAの情報があまりなく、たまたま知人の奥様が血管炎を患っていたため、話を聞くことができました。比較的軽症の方だったので、当初は楽観的に考えていました。

Q:奥様は診断を受けて、どんな反応でしたか?

A:妻は外国籍で、英語圏の情報を調べていたんですが、そこには恐ろしい情報も多く、私にはあまり話さず我慢していたようです。私は逆に情報が少なかった分、気持ちが楽だったのかもしれません。

Q:外国籍の方ということで、治療上で違いは感じましたか?

A:体格や体質も違うので、日本の治療が合うのか不安はありました。また、日本語で医師に細かく症状を伝えることの難しさもあり、妻も苦労していたと思います。

ステロイド100mg投与で躁状態に

病院の面会に来た男性
病院の面会に来た男性

Q:診断後は入院して治療を開始されたのですね?

A:はい。1か月半〜2か月の入院で、リツキシマブを4回投与し、その後ステロイド治療を開始しました。

Q:ステロイドパルス(点滴)はされましたか?

A:いいえ、ステロイドは錠剤だけでした。体格や橋本病の影響で体重も増えており、100mgからの投与でした。。

Q:100mgはかなり多いですね。

A:そうですね。日本人と比べて外国人はステロイドの容量が多く設定されているようです。海外のガイドラインを参考にしたのではないかと思います。

Q:ステロイドの副作用として精神的な影響もありますが、奥様には何かありましたか?

A:最初は関節の痛みも消え、花粉症のような症状もなくなって非常に調子が良く、ポジティブになっていました。しかし、後になってそれが「躁状態」だと気づきました。「家に帰りたい」と言い始め、不自然さを感じていました。

Q:入院中は毎日連絡されていたんですか?

A:はい、毎日5〜6回はLINEのビデオ通話で話していました。顔を見るだけでも安心感がありますからね。

ステロイドで精神不安に陥る

Q:入院生活で特に困ったことはありましたか?

A:妻が精神的に不安定になっていたので、毎日面会に行き、医師とも頻繁に話をしました。自分の状態をうまく伝えられない妻に代わって、症状を医師に伝える役割を果たしていたと思います。

Q:病院に任せきりにするだけでは難しいですね。

A:まさにそうです。ステロイド治療では、副作用を理解した上で家族が支える必要があります。今後治療を受ける方には、精神的な副作用の可能性を想定し、対策を考えておくことが大事だと思います。

注釈

精神的な副作用とは、「ステロイド誘発性精神障害(ステロイドサイコーシス)と呼ばれています。
ステロイドは精神症状の発症リスクがもっとも高い薬剤の一つと言われています。

Q:ありがとうございます。約1か月〜2か月ほどの入院生活を終え、いよいよ退院してご自宅に戻られたわけですが、日常生活に戻る中で、病院とは勝手が違うことも多かったのではないかと思います。

Naoさんご自身も、そうした違いを感じられた部分があったのではないでしょうか。退院後の奥様のご様子はいかがでしたか?

A:そうですね、実は退院した時点でも、まだハイな状態が残っていたんです。本人としては「退院しても大丈夫、やれる」と思っていたようです。
ただ、退院後にステロイドの量が減ってくると、今度はそのハイな状態の反動が来て、一気にうつ状態になってしまいました。
それから精神科や心療内科にも通うようになり、精神面のケアと血管炎の治療・予防の両面から対応していくことになりました。
退院してから1か月ほどは、私たち夫婦にとって本当に大変な時期だったと思います。

血管炎の症状が多様でわからない

ANCA関連血管炎(書籍)
ANCA関連血管炎(書籍)

Q:日常生活に戻られてから、血管炎の症状は何か現れましたか?

A:例えば、足に発疹がバーッと出てしまったり、口が乾くといった症状が出てきました。ただ、それがステロイドの副作用なのか、精神科の薬の副作用なのか、あるいは血管炎の症状として悪化しているのか……それが全くわからないんです。

今でもはっきりとはわかりません。それがとても苦しかったです。 やっぱり、「この病気ではこういう症状が出ます」といったわかりやすい情報があれば、もっと生活しやすくなるんじゃないかと思います。

Q:たしかにそうですね。症状のバリエーションが多いと、判断が本当に難しいですよね。

A:ええ、なので自分たちで情報を積極的に取りに行きました。その中でmasayaさんのYouTube動画にも出会いましたし、「ANCA関連血管炎」の診療ガイドラインが『診断と治療社』から冊子として出ているのを見つけ、それも購入しました。
この冊子は医師も読む専門的な内容でありながら、患者にもわかりやすく書かれているんです。そこに徹底的に下線を引きながら、今後の治療方針などを考えていました。

空気清浄機と加湿器で感染症対策

Q:日常生活を送るうえで困っていることや、逆に工夫されていることなどはありますか?

A:困っているのは、調べれば調べるほど「あれに気をつけた方がいい、これに気をつけた方がいい」といった情報がたくさん出てくることですね。
それをすべて実行しようとすると、外出もできないし、食事も「あれはダメ、これもダメ」となってしまって、生活ががんじがらめになってしまいます。 その中で、これは必要だと判断して取り入れたのは感染症対策です。

例えば、病院にあるような空気清浄機を自宅用に購入したり、空気を清潔に保てる加湿器を選んで設置したりしています。
また、私自身の仕事も、外に出ることをできるだけ減らし、可能な限りWeb会議などに切り替えました。人と直接会って話す機会はほぼゼロになりました。
スーパーに行く以外は、他人と接触しないような生活環境に切り替えた感じです。

Q:やはり感染症は非常に危険なので、できる限り不安を取り除く工夫をされているんですね。

A:そうですね。ある程度徹底することで、少しでも安心感を持ってもらえるように心がけています。

信頼できる情報源が大事

Q:ちなみに、Naoさんのご両親や奥様のご両親などに、この病気について説明する際はどのようにされていますか? 血管炎はまだあまり知られていない病気だと思うので、説明も難しいのではないかと感じます。

A:本当に、いいご質問ですね。実際、説明はとても難しいです。
「膠原病」とひとことで言っても多くの種類があり、しかも膠原病は比較的メジャーな言葉なので、人によって理解にばらつきがあるように感じます。

ですので、信頼できる情報源を紹介するようにしています。たとえば、血管炎を紹介している信頼性の高いサイトを見てもらったり、私自身が海外のサイト(アメリカの大学病院など)から信頼できる情報を翻訳してシェアしたりしています。そうやって理解を深めてもらえるようにしています。

二人で飛行機を飛ばしている

紙飛行機を飛ばす夫婦
紙飛行機を飛ばす夫婦

Q:ありがとうございます。とても参考になるお話です。私も自分の両親に病気のことを伝える際にとても苦労しました。やはり信頼できる情報を見てもらうのが大切ですよね。 それでは最後に、この動画をご覧になっている視聴者の方に、メッセージをお願いできますか?

A:私も妻も、もともとは健康だったので、こうした病気に直面するとは思ってもいませんでした。
特に膠原病や血管炎という病気は、患者本人はもちろん、先生も大事だと思いますが、家族の存在がとても大事なんじゃないかと実感しています。

というのも、医師は血液検査など数字で判断することはできますが、患者本人はどうしても主観的な症状で判断してしまいます。
その中で、24時間そばにいて「寝ている状態」や「食事の量」、「トイレに行く回数」などを客観的に観察できる家族が、どれだけの情報を医師に伝えられるか。それによって治療方針も変わってくると思うんです。

ある意味で、家族というのは「もう一人のポンコツなお医者さん」だと、私は思っています(笑)。

今は、私たち夫婦で「フライトしている状態」だと感じています。上に行きすぎると雲で視界が遮られてしまい、下に行きすぎると墜落してしまう。
だからこそ、寛解状態をいかに維持するかが大事で、そのためには夫婦二人で飛行機を飛ばしている、そんな気持ちで日々を過ごしています。 患者さんは、どうしても孤独になりやすいと思うので、一番近くにいる家族が、何か少しでもしてあげられることがあるなら、それをしてあげることがとても大切だと感じています。

Q:ありがとうございました。本日は、多発血管炎性肉芽腫症の患者である奥様を支えるNaoさんに、お話を伺いました。Naoさん、本日は本当にありがとうございました。

A:ありがとうございました。

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